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武田のシャイアー買収に見る製薬企業のビジネスモデルの限界

年末年始は南国でのんびりと過ごしていたのだけれど、空港で開いたスマホで思わず反応してしまう一文が見えた。
それがタイトルでもある国内最大手製薬企業の武田によるシャイアー買収のニュースでした。

 

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武田製薬はシャイアー合併により売上3.4兆のメガファーマに


日本の製薬企業は海外のファイザーやロシュ、GSK(グロクソスミスクライン)に比較して規模が小さく、前々から買収リスクを叫ばれていました。
業界一位の武田で157億ドルの売り上げである一方、昨年トップのロシュは543億ドルの売り上げを挙げています。
国内2位のアステラスと3位の大塚を足してもロシュの売り上げの半分少々しかありません。

その一方で、製薬企業のビジネスモデルは薬効のある成分を数十万パターンの化合物の組み合わせから見つけ出し、長い長い臨床試験と製造工程や品質管理の認証を受け、販売各国の承認を経た上で初めて販売され、基礎研究から上司までは十数年と長い期間と莫大な投資費用が発生します。
そしてその投資費用を新薬の認可中のわずかな期間に回収するというビジネスモデルであり、特に売上高1000億円以上を叩き出す新薬はブロックバスターと呼ばれ製薬企業の生命線になっています。
製薬企業は、どのようにブロックバスターを次々と生み出すか、がビジネスのキモになります。

なお、新薬の研究開発から上市までの一連の流れをパイプラインと呼び、製薬のポートフォリオ管理はパイプライン管理とも呼ばれます。

 

第1のビジネスモデル:自社開発

最初期においては、製薬企業は研究開発のポートフォリオの組みなおしと自社努力による研究開発手法の改善でブロックバスターの安定的な開発を実現させてきました。
これが第一段階。

しかし、やがて限界が訪れます。
上記のとおり新薬創造は難しく、天才たちが莫大な費用をかけても薬効がある成分が特定される可能性は数万分の一で、さらに臨床検査をパスすることができる確率はもっと下がります。
ブロックバスターを続けて創出し莫大な収益を獲得した企業であっても新薬創造のサイクルが予想通りに回るとは限らず、予定通りに新薬を上市できなければ企業運営には暗雲が立ち込め、特に株主の声が大きい米国では収益源はたちまち配当減に繋がり、対応を強靭に迫られることとなります。

 

第2のビジネスモデル:企業買収によるパイプライン強化
ここで第二段階、現在のメガファーマと呼ばれる海外の製薬企業のビジネスモデルに切り替わります。
ブロックバスターによって得た膨大なキャッシュを利用し、競合の製薬企業を買収することでパイプラインを増やし、新薬上市のプロセスを維持する戦略を取る様になります。

過去に、ファイザーはファルマシアやワイスといった超大型製薬企業の買収により業界トップになりました。現在トップのロシュもジェネンテックを4.5兆円で買収しています。


現在、製薬企業は同様にパイプライン強化を目的とした買収に加え、ITを活用とした患者データの分析やDeep Learning、AIの企業への買収を進めています。
ただ、このビジネスモデルにもいずれ限界がくると考えています。

理由は単純で、統合が進めばその分ひとつひとつの企業の規模が大きくなり、いかにブロックバスターといえど企業が保持するキャッシュによって買収できる企業がなくなるからです。
おそらく上位10社程度まで絞られるのでは、と個人的に思っています。

 

日本の製薬企業の現状と武田の戦略

その次にはどういったビジネスモデルが生まれるのでしょうか。
そこに向前に、いったん日本の製薬企業に目を向けてみましょう。

日本では業界三位の大塚製薬はカテゴリは製薬ではあるものの、主力製品は生理用食塩水とポカリスウェットやカロリーメイトといった機能性食品ですので、このブロックバスターによるビジネスモデルとは多少異なります。
業界一位の武田と二位のアステラスがこのモデルを取っていることが現状です。

アステラスは以前から、少なくとも合併後からは海外進出を強めており、研究拠点も海外が多く大型買収はしないまでもバイオベンチャーの買収等を積極的に行ってきました。
ブロックバスターを連ねて急成長することは今のところ無く、むしろ現在のブロックバスターであるベシケアの特許切れが迫る苦しい状況です。

一方武田も同様の状況で、GSKの社長を引き入れるといった海外目線の経営を進めていました。いくつかの合併による成長を進めていましたが、なかなかブロックバスターを上市させることができていませんでした。


しかしようやくブロックバスターが上市します。それが潰瘍性大腸炎治療薬のエンティビオであり、これは当時約8900億円で買収したミレニアム社のパイプラインによる薬品でした。
このエンティビオは2017年期には1500億円近い売り上げを上げており、現在の武田の柱になっています。

この成功体験と、このエンティビオによるキャッシュの利用、そしておそらく景気の不透明さを鑑みて、今回の大型買収に踏み切ったのだと考えています。

また、武田は5兆円でシャイアーを買収しています。エンディビオで稼いだキャッシュを持ってしても繕うことはできず、債務を負いつつなんとか買収を行いました。
これはおそらく統合戦争に対抗する最後の機会という焦りもあったのだと思います。だから驚くような超大型買収を実施したのでしょう。

 

第3のビジネスモデル・・・?
さて、買収によるパイプライン強化のビジネスモデルに限界が来た場合、次に考えられるビジネスモデルは何なのでしょうか。
想像ですが、基本的には原点会議の第1のビジネスモデル、すなわちポートフォリオ管理を進めることになります。
そしてその一方で、外部の研究機関へ投資し研究をすすめ、有効な成果を買収するというビジネスモデルを確立するのだと予想しています。

特に試行回数が必要となる薬効成分の抽出は、ITの技術に加えて多方面の専門分野、特に昨今は分子粒度の大きく化合物が複雑化している素材による研究が主流であり、大学を始めとする研究機関への投資が中心になると予想しています。
そうなると、金融ビジネスに近いモデルが取られ、生産と物流を担いつつ新薬想像は自社と投資先によって進めることになると予想しています。

残念ながら、日本の大学は研究費用が削りに削られ、特に基礎研究については優秀な研究者は欧米、または中国に拠点を移しています。
今後研究開発の拠点は欧米または中国にシフトしますが、特に欧米は既にメガファーマがひしめきあっているので、日本の製薬企業としては中国へ目を向けることが戦略上取るべきでしょう。
今のところ、中国で製薬の研究開発を協力に推進しているメガファーマは知る限りありませんし、日本からは中国はなんといっても近いため本社との連携も取り易いでしょう。(最も政治リスクはあるのですが)


今後は次の再編はどこか、そして第3のビジネスモデルである投資型のビジネスモデルになるのか、そして中国に進出するのかを楽しみに見ていきたいと思います。