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ストップ高のオリンパス~変革の背景を紐解く~

年末から乱高下を繰り返している日経平均ですが、昨日は上がり基調でした。その牽引を果たしたのがストップ高まで到達したオリンパスでした。

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1/11 現社長の笹氏と次期社長現CFOの竹内氏(日経新聞より)

そのきっかけは週末の金曜日、1/11に社長の交代、取締役の招聘、そしてそれらを含めた企業変革プランの発表があったことです。この内容が市場から評価されたことが昨日のストップ高の要因になります。

 

本日はオリンパスの変革プランについての評価と、今後の展望について整理します。

 

オリンパスとはどんな会社?

一般には宮崎あおいのCMで有名になり、カメラメーカーとして認知されていますが、その実は医療機器メーカーです。重大な不祥事は記憶に新しいですが、近年も医療機器の品質問題社員への報復人事など企業体質に問題があると言わざるを得ない状況が続いていました。

 

しかし医療機器メーカーとして見た時、オリンパスは主力製品である内視鏡の世界シェアの7割以上を持つ日本を代表する企業です。カメラは2010年ごろのコンパクトデジカメブームの頃、その旗手となった企業ではありますが、スマホのカメラ性能の向上によるデジカメブームの終焉により現在カメラ事業は虫の息です。

よって、現在のオリンパスは、利益率の高い医療機器のシェアを握っている医療機器一本足の状況です。一本足といえど、医療機器は収益性が高いため、高シェアも相まって比較的安定性、収益性共に高い企業と言えるでしょう。(あと顕微鏡事業もありますがここもカメラと似たり寄ったりです)

 

企業情報についてはこれくらいにして、今回の改革プランについて見ていきます。

 社長交代から背景を読み解く

まず、社長交代について。現在の社長である笹氏は先の重大な不祥事による経営層の刷新の結果、言うなれば想定外の経緯で社長になった人です。不祥事が発覚したのは2012年で、ちょうどカメラ事業が曇り始めた頃でした。ここで会社の建て直しのために、医療事業に集中した経営を選択します。その戦略はうまくワークし、経常的な黒字化を実現してきました。

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Olympus OI

オリンパスの営業利益推移。不祥事の2012年以降安定して収益を確保している(オリンパスIR資料より)

 

一方笹体制での問題は、

1.62歳と高齢

2.中期経営計画が現時点で達成できていない。

の大きく2点です。

 

1はシンプルで、後任が誰なのか業界関係者は気にしているところでした。伝統的に経理畑の人物が社長に据え置かれていましたが、先の不祥事は経理部門で発生した事件であるため、同じプロモーションパスを踏襲するのか、別で立てるのか注目されていました。

CFOの竹内氏と現在医療事業トップの田口氏のどちら、というところですが、報道のとおり竹内氏になりました。ただ竹内氏も60歳と高齢ですのであまり意味がないんじゃね?と思うのですが。。。

 

 

2もわかりやすいですね。オリンパスは16CSPよ呼ばれる5ヵ年の中期経営計画を策定しており、2021年時点での姿を外部に公表しています。いくつかのKPIに対して達成目標を設定しているのですが、もっとも重要な売上高の目標については年間6%成長を謳っていたものの主に内視鏡の主力製品の上市遅れにより未達成が続き、ついに今年水準を見直すこととなりました。

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中計の売り上げ目標を見直した(IR資料より)


元々笹氏は開発の出身ですし、ここをコントロール出来なかったという点は少なからず責任をとる必要があったのだと見ています。訴訟問題もいくつか発生しており、報道発表ではその引責という意味での交代ではないと強調していましたが、開発遅れについては言及していません。

 

また、交代する竹内氏は、米国など海外勤務の経験が20年以上とあり、グローバルな変革に対してリーダーシップを執れる人選という意味では適当だったのでしょう。現在CFOですが、不祥事によって社長に昇格した笹氏を除いてオリンパスでは伝統的に財務畑の人間が社長をやっています。不祥事によってその流れも断ち切られたと思っていましたが、また財務出身の人間がトップになりました。

 

人選の背景には1年前に筆頭株主になった外資ファンド、物言う株主で有名なValue Actの意見があったと見ています。ファンドである以上会計数値に強い人間を求めているのは明白かつ、会見でもValue Actからの要望があった点が透けて見えます。

 

 

 変革はなぜ必要か

 Value Act(以下VA)は2018年6月、オリンパスの株式の5%を取得し、筆頭株主になりました。VAは敵対的買収によらない経営手法で知られており、株を取得した後にその記号の経営をリードし、企業価値の上昇を成し遂げる戦略です。マイクロソフトのクラウド方針転換も、このVAの働きかけがあったといわれています。

 

記者会見においても、オリンパスはVAおよび外部コンサルタントの意見を元に経営改革に踏み切ったと言っています。コンサルはMckかBCGと予想。今回の改革はVAとコンサルのタッグでオリンパスの変革を進める流れであり、変革によって収益体制を強化し、企業価値の向上を実現することがその目的になります。

 

では具体的にメス入れる部分はどこになるのか。

 

先ほど、医療機器メーカーは高収益体制ということをお話しました。これは一般的には製品単価が高い=製造原価割合が低い、ということになります。オリンパスの主力製品である内視鏡システムも同様で、ユニットで数百万円ほどになり、原価率は3割程度です。医療機器以外の産業ロボットや家電等のメーカーでは原価率9割なんてところもあるので、かなり魅力的な数字です。よって、より高い収益を挙げるにはSGAを低いレベルで抑えることが必要になります。

ここでほかの医療機器メーカーとオリンパスを比べてみましょう。

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オリンパスと競合のコスト割合(公表値より著者作成)

こうして見ると、オリンパスは外資の医療機器メーカーと比べSGAの割合が非常に高いことがわかります。一方、製造原価は競合に見劣りしない水準です。

今回の変革により目指すものは、このSGAの圧縮が第一目標で間違いないでしょう。当然、SGAの半分はほかの企業同様人件費になります。大規模なリストラは収益が出ている中では難しいでしょうから、採用抑制による自然減を目論むでしょう。

加えてBPRも進めることは間違いありません。大規模な組織変更をアナウンスしており、その流れで不祥事や品質問題の防止のためのガバナンス体勢の強化と業務効率化を進めることになります。

 

ここ数年はそのための痛みを伴い、SGAは上昇するかと思いますが、遅れている新製品の上市さえ実現すれば売り上げの大幅増が見込まれるため、ここ数年がオリンパスの勝負になるでしょう。

 

もしそこで転べば、第2の矢として事業再編という手があります。

オリンパスには医療機器のほかにカメラ、顕微鏡の事業を持っていますが、特にカメラは前述のとおりかなり厳しいため、ひょっとすると事業売却という道も考えられます。ただ、定期的に新製品を投入し、業界がフルサイズに移行する中オリンパスのカメラはマイクロフォーサーズ一眼で勝負するというニッチではありますが確固たる地位を築いています。数年は事業を売り払うことは無いと考えられます。もし売るとしたらGPU開発を委託しているPanasonicが最有力ですね。

 

つまるところ、競合と比較して高止まりしているSGAの圧縮を大胆な改革によって数年で達成し、合わせて内視鏡の新製品上市による売り上げ増により高収益体制を実現することがVAの狙いと見ています。

 

今後の展望

2019年度はコスト増になると見ています。組織変更による効果がすぐには出るとは考えにくいからです。組織と合わせて業務を変革しますが、そこにもVAはコンサルの活用を進言するでしょう。戦略、業務、ITコンサル入り乱れ、業務委託費用によりSGAは増大します。

ただ、それも2019年度まででしょう。組織変更後に1年以上張り付くことはおそらくVAが許さないと考えます。それは内視鏡の新製品の上市はIRでも今年あるいは来年と言われており、そのときには効率的な業務を行える体制が整っている必要があるからです。

 

冒頭の記者会見で、変革の目的は真のグローバルメディカルカンパニーになることと力強く述べていました。それが実現するかどうかは、2019年度に明らかになるでしょう。

 

<了>